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Journalvol.001

坂田のり子(Curensology ディレクター)

「カレンソロジーの世界観ができるまで」前編

2018.03.17

旅で得た経験を糧に成長する女性のように、さまざまな人が持つ価値観に触れることで多様に変化していく〈カレンソロジー〉。そんなコンセプトに共鳴し、ブランドの世界観をより広げるような新鮮なアイデアをもたらしてくれるアーティストやクリエイターとの取り組みを紹介するのがこの企画。第1回目は〈カレンソロジー〉のディレクターを務める坂田のり子が、“旅”というブランドコンセプトに込めた思いや、初のコレクションの世界観が作り上げられるまでの過程について語る。

旅をイメージとして捉えた
〈カレンソロジー〉の洋服作り

“旅をして成長する女性”。これは2018年3月にデビューした新ブランド〈カレンソロジー〉が世界観を形成するためのキーワード。旅を通してさまざまな文化や景色に触れ、人やモノと出会うことで得られる豊かな経験や感動。または出発前の高揚感や帰って思い出に浸る至福の時間。そんな旅にまつわる一連の行為に想いを馳せながら、〈カレンソロジー〉の洋服は形作られる。ディレクションを手がけるのは、これまで多くのブランドでバイイングやショップコーディネート、ブランドディレクターなどを務め活躍してきた坂田のり子。今回はディレクターとしてコンセプトやデザイン、ショップ作りにどのように取り組み初のコレクションを完成させたのか、その過程や思いを聞いた。まずは〈カレンソロジー〉をディレクションするにあたり“旅”というテーマを掲げた理由についてこう話す。

「ブランドをディレクションするにあたり、まず自分が今もっとも感動できたり、面白いと感じられることはなんだろうと考えたんです。それで最初に頭をよぎったのが旅でした。毎日仕事に追われてあくせくしている中でふと空いた時間に旅へ出て、初めての場所に足を踏み入れてドキドキしたり、大自然の中に身を置いて生命の力強さを感じたり。そんな旅のワクワクする気持ちやそれを通して得られる体験や感動を共有できるようなブランドにしたいと思ったのがきっかけで、旅をコンセプトに掲げたんです。旅とは人によっていろいろな捉え方があって、すごく奥行きのあるテーマだと思います。服のデザインでいえば旅先で行動するのに便利な機能的な服もあれば、アウトドア要素を含んだワイルドなウエアもイメージできます。でも私たちが想定するのはトラベルウエアではなく、着ることで旅をしたいという気持ちを自然と高めてくれたり、普段着としても街でモダンに映えてふと旅先の情景を思い起こさせてくれるような服。機能だけではなくイメージとして旅を捉えてデザインに生かしていくのが〈カレンソロジー〉の服作りのベースになっています」。

サイズ感やフォルムのみならず実際に人が着た時の雰囲気やドレープの表情などディテールのイメージを服作りに携わるスタッフみんなと共有するために、一型ずつ丁寧にデザイン画を確認していく。

自由で何事にも柔軟であることを
ブランドの魅力にしたい。

旅をコンセプトにブランドの世界観や洋服のデザインイメージを膨らませていく上で、これまで坂田さんが実際に旅を通して得た経験や感動も随所に活かされている。そのひとつの例としてこんな話が挙がった。
「私は子供の頃からブルーが好きで、旅先でも綺麗なブルーのアイテムを見つけると思わず目がいってしまいお土産に購入することが多いんです。最近では沖縄を旅行した時に宿泊したホテルのディナーで使われていたお皿が、まるで沖縄の海を連想させるような美しく深みのある素敵なブルーで一目惚れしました。思わず作家さんのお名前をうかがうと、沖縄の読谷村に工房を構える陶芸家の大嶺實清さんの作品であることを教えていただき、すぐに工房を訪ねてお皿や花器などを手に入れました。大嶺さんの作品は沖縄で出会った時は風景に自然と溶け込むような優しい表情でしたが、家に持ち帰り並べた姿を改めて見ると、その佇まいはすごくモダンでまた違った表情を見せてくれる。そんな見るシチュエーションやその時々の気分によって変化する印象を楽しむのも、旅を感じさせる服をデザインする上で意識していることのひとつです」。

陶器にえんぴつ、ビスケットなど坂田さんが旅先で見つけた素敵なブルーのグッズは同じ色なのに印象がどれも違っておもしろい。右の写真は沖縄で一目惚れした大嶺工房の作品。

坂田さんが長年に渡り愛し続ける“ブルー”は、〈カレンソロジー〉のデビューコレクションを象徴するキーカラーともなっている。
「ブランドのイメージカラーをブルーに決めた当初、ワントーンに絞り込んでこのブランドを象徴するようなブルーを提案しようと思っていたんです。最初にイメージしていたのは、まさにメインビジュアルに登場するワンピースのような陰影があって奥行きを感じられるような絶妙な明るさのブルーでした。ですが他のアイテムをデザインしていくうちに、作る服によってそれぞれ似合うブルーが微妙に違って決めきれなくて。それならばいっそ統一せずに色々なブルーの表情を楽しめる方が面白いと思ったんです。それはカラーに限らず服作り全般においても言えることで、あまり強いメッセージ性やルールはブランドにあえて設けないように心掛けました。それは先入観や固定概念を持たずにフラットな気持ちでみなさんに洋服を手に取っていただき、自由にコーディネートや着るシチュエーションをイメージして欲しいからなんです。気分の赴くままに行きたいところへ行く自由さが旅の醍醐味のように、デザインやコンセプトも柔軟でいること。それがブランドの魅力となってくれたら嬉しいですね」。

ふわっと風を孕むような軽やかさが印象的なこのロングワンピースはデビューシーズンを象徴する一枚。陰影が加わることでさまざまな表情を見せる美しいブルーがモダンさを引き立てている。

坂田のり子

東京出身。株式会社ベイクルーズに入社後、ブランドのバイヤー兼コーディネーター、ショップマネージャーとしてブランドの立ち上げに関わるなどの経験を積んだのち退社。その後、〈マッキントッシュ フィロソフィー〉のディレクターに就任。2017年からは、〈カレンソロジー〉のブランドディレクターとして立ち上げに参加。

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